私の母親は家事が嫌いで料理も手を抜いたものが多かった。子供の頃によく食べたカレーは「ノザキの馬肉カレー」という一食分のカレーが入った缶詰でした。缶の
まま鍋で温めるのですが、缶切りで開ける時にカレーが吹きこぼれないか非常に緊張したことを憶えています。当時は「レトルト」が存在しなかったのでカレーも缶
詰だったのでしょう。また、吸い物は「天狗のお吸い物」という、袋の中身をお椀にあけてお湯をかけて作る物でした。具は乾燥ネギと麩だったと思います。今ではこの
タイプの吸い物や味噌汁は各メーカーからいろんな種類の物が出ていますが、60年前には珍しかったと思います。その後も、父親は昼食に「どん兵衛」を食べたりして
いました。「おかあちゃんが作るうどんより、よっぽど美味い」と言いながらです。まあ、こんな少年期を過ごしたからでしょう。この歳になっても駅弁や駅そば
の本を集めたり「孤独のグルメ」などの食べ物番組を録画撮りしてまで見たりしています。食べることに過去のトラウマがあるのでしょうか。