(つ‐5a)ツィゴイネルワイゼン(その1)
音楽の好きな方なら皆さんご存じのヴァイオリンの名曲です。またヴァイオリンを勉強する人なら、いつかは弾けるようになりたい曲の一つではないでしょうか。この曲はスペイン生まれのヴァイオリニストであるサラサーテが、ハンガリーのジプシー(現「ロマ」)の音楽を採り入れて作曲しました。その劇的なゆったりとした序奏と、後半部からの超絶技巧を必要とするスリリングな演奏との対比には素晴らしいものがあります。まだの方はぜひ一度聴いてみて下さいね。ところで私はこの曲を聴くと思い出し笑いをしてしまうことがあります。皆さんは吉本新喜劇の桑原和男さんをご存知でしょうか。「和子おばあちゃん」と呼ばれるおばあさん芸が特に面白く、胸からスルメのようなシワシワのオッパイを引っ張り出して(もちろん作り物の)客席を笑いの渦に巻き込んだ芸人さんでした。しかし最もうけたのは、彼が突然「神様~!」と叫んで床に崩れ落ちる芸でした。その瞬間、ツィゴイネルワイゼンの冒頭部が鳴り響き、舞台は暗転し、倒れ伏した彼に上からスポットライトが当たりました。そして嗚咽・慟哭しながら小声で何度も「神様ァ・・・」と呟きながらも同僚の私生活を暴露したり吉本興業のギャラの文句を言ったりして客席の笑いをとりました。そのあと音楽は止み、舞台は明転し、起き上がった彼が「ああ、よう寝た」とか言って他の人たちをコケさせる、というギャグでした。この曲を聴くと、ついそのシーンを思い出してしまうのです。その桑原和男さんが先日8月10日、老衰のために87歳で亡くなられました。謹んでお悔やみ申し上げます。そして「ツィゴイネルワイゼン」を世に広めて下さり、ありがとうございました。