雄さんの昭和ひとりごと や_4-

(や‐4)香具師

「やし」と読みます。祭りや縁日などで屋台を出して物を売る露天商のことで、「テキ屋」とも言います。元々は江戸時代に薬やお香を作り露店で販売していた「香具師(こうぐし)」に由来し、やがて売り場を取り仕切る人を指す言葉に変わり、今では露天商全般を言うようになりました。なぜ「香具師」を「やし」と読むのかは諸説あり、薬を作る「薬師」だからとか、「野士(没落武士)」が生活のために道で物を売ったからなどですが、文字としては、(ね‐4)の「螺子」を「らし」ではなく「ねじ」と読むのと同じく、二文字以上をまとめて訓読みにする「熟字訓」です。ところで私の経験談を一つ。西宮のある寺社に家族で初詣に行ったときのことです。お詣りが終わり、孫のために屋台のフランクフルトを買おうとテキ屋のお兄さんにお金を渡しました。他に客はいません。すでにフランクフルトは美味しそうに焼きあがっています。しかしお兄さんはキョロキョロと周囲の参拝者を見ながら、鉄板の上でフランクフルトを転がすばかりで、なかなか包んではくれません・・・。フランクフルトはすでに焦げ始めています・・・。しばらくしてお兄さんは諦めたような顔をして、ようやく包んでくれました。思うに、買っている客がいると他の人も買う気になることがあるので、次の客が来るまで私たちを留めておきたかったのでしょう。しかし私は腹が立つよりも「香具師の商売」を垣間見た気がしたので、晴れ晴れとした心で孫にフランクフルトを渡したのでした。 さて次は(ゆ‐4)です。さあ何を書こうかな。