雄さんの昭和ひとりごと (か-7)

(か‐7) 管理は我々の手で!

 私の住むマンション「エスポワール S(Sは地名)」は、土地の購入から建築までの全てを30世帯の住民が主体となって建てた「コーポラティブハウス」です。コーポラティブハウスの良いところは、各住戸の位置や広さを全員で協議して決めて、その結果として住民は自分の住戸の間取りを自由に決められることにあります。最上階の住戸にはロフトやルーフバルコニーがあり 1階の住戸には庭や地下室があるなど 30の住戸全ての間取りが違い、金額も異なるのです。そのため計画段階から竣工まで何度も何度も会議を開いて協議を重ねました。おかげで、完成して入居した時には住民全員が顔見知り(というより旧知の仲)になっていたのです。

今年でちょうど30年経ちました。完成の年に「阪神淡路大震災」が起きましたが、幸いなことに建物への影響は全くありませんでした。これは住民の中に建築関係の仕事に就いている方が4人もいて、その方たちが「建築委員会」を組織し、プロとして設計段階から施工終了まで設計士や建設会社に対して要所要所で目を光らせて下さった結果です。また、他のマンションが住宅の保守点検・設備維持や駐車場運営などの業務を管理会社に委託するのに対して、私たちのマンションは自分たちで「管理組合」を組織・運営しています。5年に一度のペースで組合理事の仕事が回って来るので大変ですが “管理は我々の手で!” をモットーに、その年の6人で役割分担をして円滑に活動しています。

 なお、特筆すべきは住民による “サークル活動” が活発なことです。入居後すぐに「男の料理の会」や「酒の会」、「子供会」や「体操の会」が始まりました。料理の会と酒の会は男連中が集まって集会室の台所で料理を作り、それぞれが持ち寄った酒で「ワイワイ」と賑やかに食事会を開くのです。会のモットーは “料理の酒の 半分は鍋に 半分は胃に” でした。時には奥様方を招待して “特に腕を振るった料理” と “厳選した銘酒” を振る舞って喜ばれました。その時に酒を届けてくれた酒販会社の人が「きょう 奥さんたち“正月”やなあ」と言った言葉が忘れられません。この活動は、今も続く全住民参加の「夏祭り」や「餅つき大会」へと発展して行きました。また子供会では花火大会やクリスマス会の他、バスを仕立てて蒜山高原へのスキーツアーを実施しました。子供たちの雪と戯れる笑顔や宿で楽しく過ごす姿を見て、親たちも元気をもらいました。月一回ごとに開かれる体操の会も30年続き、後述の「生き生き元気サロン」へと発展して行きました。

・・・そしていま、入居後30年が経ち住民も仕事の第一線から離れ“悠々自適生活”を送る方が多くなりました。そこで“集会室をもっと活用しよう”という機運が盛り上がって来ました。その結果「生き生き元気サロン」と「卓球部」、「吹く吹く倶楽部」と「ギターを練習する会」というサークルが新しく生まれました。「生き生き元気サロン」は前述の「体操の会」を立ち上げた東洋医学を職業とする方が、ストレッチ体操や呼吸法の実技指導と、“シルバー世代の健康保持” についての講義を座談会形式で参加者に資料を使って教義して下さいます。「卓球部」は市のスポーツセンターで不要になった卓球台一式を貰い受けて集会室に設置して運動好きの方たちが毎週練習に励み、「吹く吹く倶楽部」は尺八やハーモニカ、ケーナや鼻笛など “吹く楽器” を愛好する方たちが活動し、私が所属する「ギターを練習する会」は “懐かしの昭和フォーク” を中心に、クラシックギターの方・演歌系ギターの方など様々なジャンルを希望する方が集まって週一回のペースで練習を行っています。昨年のクリスマスには 記念すべき第一回のミニコンサートを開催しました。また、毎年の「夏祭り」や 毎月行われる「生き生き元気サロン」の中の “出し物自由枠” でも発表する機会が頂けるので練習に熱が入ります。なお、これら上記の講座全てが 集会室の使用料は無料なのです。

前述のように、今年は“入居30年記念”の年です。6月からの新理事さんは「記念行事」の用意が大変になるでしょう。でも多分、住民全員の自発的な協力により円滑に実施されると思います。