(さ‐7) サクラ サク
また大学時代の話です。二・三回生の時、学生自治会の役員をやりました。同級生のホルンのK君に誘われたのです。彼もまた卒業する先輩から誘われたのです。その彼が委員長、私が副委員長という役回りでした。校舎から少し離れた所にプレハブの自治会BOXがありました。中に入ると窓際の長机の上に黒いヘルメットがあり、壁には数本の長い棒が立てかけてありました。“ゲバ棒” です。ヘルメットの黒い色は、赤軍派でも革マル派でも中核派でも民青系でもない、無派の「ノンセクト・ラジカル(ノンセク)」を表現しているらしいです。
しかし数年前に吹き荒れた大学紛争の嵐も既に収まっていたので、私達の自治会の仕事は新入生歓迎会や学園祭などのイベント運営が活動の中心でした。大学から自治会に出る助成金は僅かな額だったので、収入源を確保することも大切でした。学園祭パンフレットの広告集めのために、京都市内の企業や飲食店・喫茶店などのお店を“お願いして” 廻るのです。
また、合格発表の電報の仕事もやりました。あらかじめ入試の当日に受験生たちから電報の申込みを有料で受付けておいて、発表の日に合否の電報を打つのです。申込み者は沢山いました。受験生は北海道から九州までの広範囲に亘っているので、発表を見に来られない人が多かったからでしょう。
電文は、合格の場合 “サクラサク”、不合格の場合 “サクラチル” でした。午前10時に大学構内の掲示板に発表されて、賑わう受験生や保護者の肩越しに60人分の合格者番号を写し取り、申込み者リストの名前に○や×を付けて、少しでも早く、しかし間違わないように、狭い郵便局の中で他の客に遠慮しながらK君と手分けして打ちました。不合格の人に “サクラチル” と書くのが悲しかったことを憶えています。“♪~桜咲いたら一年生~” という歌がありますが、“サクラサク” には深い意味があるのです。