(そ‐6) ソノシート
中学生の時に友達四人でフォークバンド「ゼファーズ(なかよし・おのころ・たこ焼きバンド)」を結成した話はこれまで何度か書きましたよね。個人的にギターを練習していた四人がS君の声かけで集まったのです。練習は主にM君の家で土日に行いました。目標は、ヤマハ・ライトミュージック・コンテストに出て賞を取ることと、ラジオ番組のアマチュアバンドコーナーに出演することでした。
しかし田舎なのでちゃんとした楽譜が手に入らなく、卓上ポータブルプレイヤーでレコードを何度もかけて耳コピしたり、ジャケットに印刷されたごく簡単な楽譜を頼りに自分たちでコードを考えてハモリも付けました。そしてオープンリールのテープレコーダーに、手間をかけて何度も録音しては再生し、四人でダメ出しをしながら練習を進めました。カセットテープレコーダーは当時まだ普及してなかったのです。
やがてクリスマスがやって来て、我々もパーティーをしようということになりました。女の子を誘えるわけもなく、丸刈頭の男子四人でいつも練習で使わせて頂いている和室の部屋でやりました。レコードをかけながら、温かい紅茶や買って来たケーキ、それにコーラやM君のお母さん差し入れのおでんなどを食しながら、適当にクリスマスソングを歌ったりトランプをしたりしました。
そのうちに「もっと部屋の雰囲気を出そう」ということになって、試しに天井の蛍光灯にソノシートを何枚か貼ってみました。「ソノシート」とは、ビニールでできた赤い透明な柔らかいレコードのことで、当時の音楽雑誌に付録として挟まれていたのです。すると部屋全体がピンクの照明に染まり「それらしい雰囲気」になりました。
ふとテーブルを見ると、紅茶の角砂糖がこれまで白とピンクの二種類あったのに、なぜかすべてが同じ色になっているのです。不思議なので天井のソノシートを外してみると、ちゃんと白とピンクの二色あるのです。そこで私たちは一つのゲームを思いつきました。角砂糖の白とピンクを混ぜてバラ撒き、顔にソノシートをお面のように当てて、箸で白とピンクを仕分けるのです。本人には全く区別がつかないので白の壺にピンクを入れたりその逆をしたりしますが、横で見ている者には結構面白いのです。そして正解率の高い者から順に、各人が一つづつ持ってきたクリスマスプレゼントを選ぶ優先権が与えられたのでした。
まあ、こんなことをしながら高校生になっても活動を続けて、M君を中心にオリジナル曲もたくさん作り、目標とした「コンテストで賞を取ること」も「ラジオ番組に出演すること」も達成できました。また、地元の市民会館で行われたプロの「赤い鳥」や「五つの赤い風船」などの「前座バンド」としてステージに立つこともできました。その様子は、よければSNSなどで見て下さいね。
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