(ほ‐5) HR通信の10冊
昔、ある高校で一年生の担任をした時に「HR(ホームルーム)通信」を発行していました。クラスの生徒向けの新聞のようなもので、B4の紙一枚分を2~3日に一回のペースで出していました。内容は、学校行事(定期考査・体育祭・文化祭・遠足・保護者懇談・その他)の連絡および説明が中心でしたが、夏休み前には「新潮文庫の100冊」をもじった「HR通信の10冊」を掲載しました。これは私が読んで面白かった本のうち、高校生が興味を持ちそうな本をピックアップして紹介したコーナーで、夏休みの間にこの内の一冊でも読んでくれたらいいなあという思いで毎回書きました。希望する生徒には私の本を貸しました。少し長くなりますが、それをまとめて紹介させて頂きます。著書名・作者名・出版社名のほかに、私の「推薦文」もそのまま書かせて頂きます。なお、今では使わない言葉などが文中にありますが、当時(昭和62年)の時代背景を尊重して、そのまま掲載させて頂きます。
1 用心棒日月抄 藤沢周平 新潮文庫
のっけから時代劇なんて担任もヤキが回ったね・・・などと言わずに読んでごらん。主人公・青江又八郎の人間性に魅かれること請け合いです。時代は元禄、赤穂浪士討ち入りのころ。故(ゆえ)あって東北のある藩を脱藩し、江戸でその日暮らしの用心棒生活を送る主人公と彼を取り巻く人々の温かい人情。そして、国元から差し向けられた刺客との死闘。又八郎の剣が冴える!。
2 殺す側の論理 本多勝一 朝日新聞社文庫
恐ろしい本だ。差別する側(殺す側)とされる側(殺される側)。その構造がいかにして出来上がっているかを著者(朝日新聞編集委員)は足で取材した実体験を素にルポしている。ベトナム戦争・原爆・中国人虐殺・インディアン問題・アイヌ民族問題など、常に真正面から見つめる著者の目は鋭く、そして涼しい。
3 女子高生は菫色 千田夏光 汐文社
ルポ「従軍慰安婦」で鋭いペンを見せた著者が、この本では優しさ一杯。悩み多き“フツーの女の子”との文通で綴る温かい本。女子は必読。男子も女心の研究のために読んでみては?。
4 宇宙人の謎 ‐人類を創った神々‐ エーリッヒ・フォン・デニケン 角川文庫
高校2年の夏に友人と二人で目撃しました。大阪湾の海上をジェット機の10倍位の速さで大阪方面へ飛んで行きました。「見たか?」「ああほんまにあるねんなァ・・・」。今日(6月24日)が「UFOの日」にちなんでこの一冊を紹介します。。世界各地に残る神話・遺物・文献の数々・・・。この謎をつなぐカギはひとつ。「大昔、宇宙人が地球に来ていた!」。君、仏像の後光・天使の頭上の輪は、輪ではなくて宇宙帽だったのだよ。
5 8フィートの週末 片岡義男 新潮文庫
「波は8フィート、風はオフ・ショア。テイクオフした彼をじっと見守る彼女の眼差し・・・」三年前「波乗り」に恋して自分のもとを去った青年に会うため、彼女はこの島へ来た。サーファーの集まる南海の小島。週末の三日間。・・・少ない行数と多いイメージ写真で読みやすいこと!。今年の夏はこの一冊で涼味満点だ。
6 白夜の国のヴァイオリン弾き 小野寺 誠 新潮社
北欧フィンランドの美しい自然を背景に描く、音楽をめぐる小さな冒険の物語。実話です。
7 12人の浮かれる男 筒井康隆 新潮文庫
筒井康隆の本はどれも面白い。この本はレジナルド・ローズの「12人の怒れる男」のパロディ。「日本に陪審制度が復活した。俺たちゃ最初の陪審員。マスコミがこんなに注目してるのに、無実の被告をそのまま無罪にしたんじゃつまらない。なんとか死刑に・・・」という表題作の他4編。シナリオ形式で最初は少し読みにくいが、慣れると登場人物がイキイキとしてきて面白い。演劇の好きな人は必読だ。
8 名探偵もどき 都築道夫 文春文庫
「ある時は金田一、またある時はホームズそしてコロンボと、うちの旦那はルパンも驚く名探偵!」探偵小説にかぶれた茂都木(もどき)氏が有名探偵になりきって大活躍。ホームズもどき・ヴェルヴェット〃・ポアロ〃・マーロウ〃・コロンボ〃・ルパン〃・メグレ〃・金田一〃 の8編。なお別の本だが、同じ著者による「捕物帳もどき」も江戸情緒いっぱいで面白いよ。
9 高校生殺人事件 松本清張 角川文庫
夏休みの暑い夜。寝付かれずに沼へ来た僕の耳に、闇をぬって聞こえる笛の音。落ちていた暗号文。山の中に今も残る塹壕の跡。必要も無いのに建てられた資料館にはいったい何があるのか。殺された友人のために犯人を追う僕たち高校生仲間の前に現れる謎の人物。次々と起こる殺人事件。戦前のこの里に、いったい何があったのか・・・。
10 サラダ記念日 俵 万智 河出書房
「この味が いいねと君が 言ったから 7月6日はサラダ記念日」。三十一文字(みそひともじ)で綴る、若き女性教師の青春記念碑。「まちちゃんを 先生と呼ぶ子らがいて 神奈川県立橋本高校」もいい。そこで私も一首。「雄ちゃんを先公と呼ぶ子らがいて 大阪府立○○高校」。