雄さんの昭和ひとりごと (むー5)

(む‐5)ムラセ

 昔、京都にあったワラジで有名なお店です。といっても履物屋ではなく洋食屋さんです。店名を「洋食のムラセ」といって、四条・寺町を少し上がった所にありました。新京極側からも入れた細長いお店でした。ではなぜ食べ物屋なのに「ワラジ」かというと、注文して出て来たビフカツがまるで草鞋(わらじ)のような形で大きくて、楕円形の銀皿からはみ出ているからです。付け合わせの野菜やポテトサラダ、スパゲッティなどは全てカツの下に隠れていました。味は普通のビーフカツで、肉はわりと薄かったです。多分、肉たたきで思い切り伸ばしたからだと思います。ソースはテーブル上のウスターソースを自分でドボドボとかけました。洋食屋なので他にもエビフライやクリームコロッケ、ハンバーグやビフテキ、オムライスやスパゲッティナポリタンなどもありましたが、ほとんどの客がワラジカツを注文していました。場所的に観光客が多く、京都旅行の話の種にしたのでしょう。でも今と違って、料理の写真を撮っている客など一人もいませんでした。フィルムの現像代や同時プリント代が高かったし、そもそもブログやインスタなど存在しなかった時代です。みんな料理を目で楽しんで食べていました。・・・50年前、大学の前期試験や後期試験が終わったあとの開放感に誘われて四条通りや河原町、三条通りや新京極をぶらぶらと食べ歩いた時の想い出です。