(め‐6) めはり寿司
駅弁の話です。「めはり寿司」は麦飯を高菜の浅漬けで包んだ熊野・吉野地方の郷土食で、樵(きこり)や猟師など 山で力仕事をする人の弁当として作られました。そのため一つひとつが大きくて食べる時に口を大きくあけ、その際に目も見開くので「目張り寿司」という名前が付いたと言われています。なおJR紀勢本線の和歌山駅では“和歌山水了軒”が考案した、小さくて食べやすく 海産物などいろんな具材の入ったものが駅弁として販売されていて好評のようです。
次に、同じくJR紀勢本線の紀伊田辺駅前にある“宝来寿司”には 駅弁ではありませんが「ひとはめ寿司」というユニークな巻きずしがあります。巻きずしといっても海苔巻きではなく「ヒロメ」という大きな生の海藻で巻いた寿司で、酢飯の中に締め鯖が入っていて とても美味しいということです。なお“ひとはめ”とは「ヒロメ」の紀州弁らしいです。
次に、JR和歌山線と近鉄吉野線の共同使用駅である吉野口駅のすぐ前にある“柳屋”には「絹巻時雨寿司(きぬまきしぐれずし)」という趣きのある巻きずしがあります。やはり、巻きずしといっても海苔巻きではなく「おぼろ昆布」で巻いた寿司で、アサリのしぐれ煮が入っていて非常に美味しいそうです。なお6年前まではJR・近鉄共同ホームの待合室にある売店で駅弁として販売していたそうですが、駅の改築に伴なって待合室が廃止され 駅弁としての販売も無くなってしまったそうです。残念です。
以上 紀州に伝わる“海苔巻きでない巻きずし”三つを紹介しました。この内の「ひとはめ寿司」は是非とも紀伊田辺駅の名物駅弁として販売して欲しいし、「絹巻時雨寿司」も 吉野口駅の駅弁として販売を復活して欲しいと思います。
ところで長年、私は秘かに「めはり寿司」の名前の由来が「食べる時に目を見開くから」は間違いで、昔の紀州では海藻の「ヒロメ」で包んでいたから「メ張り」になった、というのが本当の理由だと思っています。この説は、どこにも載っていませんが・・・。