(や‐8) 耶 馬
「やば」です。耶馬渓は九州大分県の奥地にある美しい渓谷で “日本三大奇勝” の一つと言われています。以前このブログの(い‐8)「祖谷」で、四国徳島県の奥地にある「祖谷渓」を採り上げました。 “日本三大秘境のひとつ ”と言われる渓谷で、平家の落人伝説が残っているのでしたね。
今回の「耶馬渓」の見どころは、山国川の浸食による奇岩や断崖と、その断崖を 江戸時代の僧・禅海がノミひとつで手掘りした「青の洞門」など “大自然の驚異” が生み出した景観です。祖谷渓も耶馬渓も共通するのは 川の浸食が生み出した “三大秘境” であり “三大奇勝” なのですね。
そしてもう一つ共通することがあります。私が愛読する紀行作家の 故・宮脇俊三氏がどちらも訪れて、その紀行文を記していることです(「祖谷渓」についてはブログ「い‐8」をお読み下さいね)。
実はこの「耶馬渓」については見どころがもう一つあって、むかし走っていた鉄道の廃線跡がサイクリングロードになっている、ということです。列車に乗ったつもりで自転車を走らせることができるのですね。この鉄道は「耶馬渓鉄道」と言って、山奥の「守実」から山国川に沿って 周防灘に面した「中津」まで、人や木材を運ぶために大正2年に建設された路線でしたが、並行する道路が整備されてマイカーやトラックが普及したため乗客や貨物が激減し、昭和50年に廃止されたということです。
宮脇氏は、この鉄道に乗ったことはありませんが、昭和63年2月に廃線跡を自転車旅したときの “ルポルタージュ” を残しています(「失われた鉄道を求めて」文春文庫)。以下、いくつかを引用させて頂きます。
「“青” という集落を通る。青の洞門の “青” は地名であり、岩の色が青いからではない」
「青の洞門は “禅海” という僧が三十年の歳月をかけて岩を85mも掘り抜き開通したという。大した執念だが、人は四文、牛馬は八文の通行料を徴収したそうだから抜け目ない坊さんらしい。日本における最古の有料道路でもある」
「凝灰岩の岩峰がゴツゴツとそそりたち耶馬渓の代表的景観をなしている。良い眺めだが、非常に寒い。雪も降って来た。道に面して古びた酒屋があり “禅海” という焼酎を売っている。寒いので一杯ひっかけたくなるが、サイクリング中なので酒など飲むわけにはいかない」
「登り坂の途中、道の上に白ペンキで “終点まで四キロ。ガンバレ!” と書いてある。こちらの気持ちを見透かされたようで、苦笑する」
「町中の食堂でラーメンを食べる。冷えた体と運動後の空腹とで、格別でないラーメンのうまいこと!。そして何よりも終点まで乗り通したのが嬉しい」
以上です。37年前の文章なので、観光地として今の耶馬渓は当時よりもっと整備されていると思います。レンタサイクルも電動自転車があったりして、宮脇氏のときよりも充実しているようです。私も、大分県に行くことがあるときには必ず訪れて廃線跡をサイクリングしてみようと思います。そして耶馬渓名物の自然薯をたっぷり絡めた「やまかけそば」を戴いてみたいと思います。