雄さんの昭和ひとりごと (る-7)

(る‐7) 留守番電話

 まだ “ケータイ” が存在しなかった昭和の時代、電話といえば家庭に一台の固定電話があるだけでした。サザエさんの家を思い浮かべていただければ判ると思います。その “家電いえでん” も昭和のすえごろになると “子機” が付いて、他の部屋でも通話ができるようになるなど、少しづつ便利になってきました。そしてもう一つ便利になったものが留守番電話、いわゆる “留守電るすでん” でした。

 当時の留守電は「カセットテープ式」で、録音時間が3分程度のごく小さいカセットテープを電話機に装着して使用する方式でした。イメージとしては “カセットテープレコーダー(ラジカセ)” を扱う感じでした。まあ、留守電に入れる通話など長い人でも1分ぐらいなので、それで十分こと足りる状況でした。

 ある日のことでした。帰宅して電話機を見ると “着信あり” のランプが点滅していたので再生すると、それはとんでもないものでした。あるハウジング会社が新しく開発した一戸建て住宅のCM音源を長々と3分、録音していたのです。おそらく以前、住宅展示場を見学した時に書いたアンケートの情報が洩れて、その会社に悪用されたのでしょう。この状態では、もし他の人から大事な連絡があっても録音できないので、すぐに消去しました(消去といってもテープを最初まで巻き戻すので、けっこう面倒な作業です)。

 すると、夜にその会社の社員から電話がかかってきて「当社の新商品の案内を聴いて頂けましたでしょうか?」などとしゃあしゃあと話し始めたので、留守電に長々とCMを入れることの非常識と 名簿を流用する悪質さについて、語気を強めて苦情を言ったのはもちろんのことでした。

 ・・・でもまあ、これもある意味 “昭和の懐かし物” の一つだったのかも知れませんが。