雄さんの昭和ひとりごと -ち_3-

(ち-3)チューリップのアップリケ

 「昭和フォーク」は又の名を「メッセージ・フォーク」とも呼ばれ、歌詞や内容が社会に訴える力があってこその歌だと言われている。 (せ‐2)の「戦争は知ら
ない」や、(し-3)の「昭和ブルース」などすべてそうである。そしてこの「チューリップのアップリケ」も昨日の「竹田の子守唄」(赤い鳥)と同じく、社会に「人
権問題の存在」を知らしめた歌なのである。この曲を作った岡林信康氏は同志社大学の神学部で学び、またその風貌がキリストに似ているので「フォークの神様」と呼ば
れた人だ。氏は、肉体労働者の過酷な生活を歌った「山谷ブルース」や生きる意味を問いかけた「ガイコツの唄」など、自身の経験を基にした曲を作ったが、ある時期か
ら人権問題に取り組んだ曲を発表するようになった。この「チューリップのアップリケ」(1969年)は、貧しさに耐えかねて家を出た母親に、少女が帰って来てほし
いと幼心にも訴えた実話である。また1969年発表の「手紙」も、理不尽な目に遭い自ら命を絶った女性の実話を基にした曲だ。そしてどちらも放送禁止歌に指定され
ていた・・・。今から半世紀前の日本は、ただ「懐かしい」とか「昭和レトロ」とかだけではなく、今では考えられないような物事が幅を利かせていたことも事実なの
だ。