(つ-3)「翼をください」から「冷たい雨」へ
サブタイトルは「昭和フォークからニューミュージックへ」です。前回「昭和フォーク」は又の名を「メッセージフォーク」と言って、主義主張を社会に訴えてこそ
の歌であると書きましたが、やがてその歌詞から社会性・政治性・生活感などが消えて、音楽的にもロックの要素が加わるなどして垢抜けた「ニューミュージッ
ク」と呼ばれるものに変わっていきました。しかし、いつ変遷したのか? また、そのアーチストは誰か? などは、はっきりと決まっていません。ポップスの専門
書や文献によっても異なるし、専門家や語る人によっても違う曖昧模糊としたものなのです。私は次のように考えています。昭和フォークを代表する「翼をくださ
い」(詞・山上路夫 曲・村井邦彦 1971年)の場合ですが、歌っていた5人グループの「赤い鳥」はその後2人ペアの「紙ふうせん」と3人グループの「ハイ・
ファイ・セット」に分かれました。そして紙ふうせんが「冬が来る前に」(詞・後藤悦治郎 曲・浦野直 1977年)など、昭和フォークの雰囲気そのまま
に今も歌い続けている一方、ハイ・ファイ・セットは「冷たい雨」(詞・曲・荒井由美 1976年)や「フィーリング」(1977年)を発表するなど、その洗練され
たクリアなサウンドは「ニューミュージックの先駆け」と思っています。皆さんも一度、違いを聴き比べてみてくださいね。