雄さんの昭和ひとりごと -わ_2-

(わ‐2)嗤う

 「わらう」と読みます。「笑う」と少しニュアンスが違うようです。「鼻でわらう」や「あざわらう」の時に使うとよい字かもしれません。私はこの字を、女性漫画家グレゴリ青山氏の著書「ナマの京都」や「しぶちん京都」で知りました。氏は、高校時代に京都の老舗料亭や老舗商店でアルバイトをした時に女将さんや大奥様から「他人(ひと)様に嗤われない」ことを叩き込まれたそうです。例えば牛乳瓶を返す時「洗わずに出すと牛乳屋さんに嗤われるえ」と言われたり、出汁の取り方を知らないと「嫁に行ったら姑さんから嗤われるえ」のようにです。この本を初めて読んだ時は、なるほどこれが例の「京いけず」かと思いました。本はかなり大げさな表現で描かれてもいたからです。しかし読み返したとき、これらは「実は大切なこと」に気が付きました。近年、他人を思いやる心の乏しい人や気持ちを汲み取る事の出来ない人が増えてきました。そのような人に対して「嗤われる」は、「京のぶぶ漬け」と同じように、やんわりと諭してくれる京都びとの「優しさ」ではないでしょうか。