(く‐7) 釘煮
“くぎに” と読みます。おせち料理の黒豆を炊くとき古釘を一緒に煮ると豆の色つやが良くなるので、妻は必ず実行しています。でも、表題の “釘煮” はそれではありません。2月末から4月初めにかけて 姫路・高砂・明石・塩屋などの播州と岩屋・富島・佐野など淡路島北部の各家庭や製造元で作られる「いかなごのくぎ煮」のことです。この釘煮を炊く醤油や砂糖の匂いは地域の春の風物詩と言われています。また名前の由来は、錆びて折れ曲がった釘と見た目が似ているからだそうです。
食通で知られる小林しのぶ氏の著書「日本が誇る絶品の食遺産100」によると、氏がこれまでに食べた中で “一番うまい” のは 淡路市佐野の「柴宇」という食彩メーカーが作る釘煮で、氏はこれを「どんぶりご飯の上に山盛りに乗せて かき込んで食べる」そうです。しかしこの近年いかなごの不漁が続き、釘煮は “高級品” になってしまい 我々の口に入ることが難しくなりました。でも、私は知っています。リーズナブルに釘煮を味わう方法を・・・。
本当は誰にも教えたくないのですが、このブログの読者にはこっそりお伝えします。それは駅弁の「六甲山縦走弁当(¥860)」を食べることです。中身は、十穀米と麦ご飯のおにぎり二つ・蛸の旨煮・鶏の鍬焼・すき焼き牛肉・だし巻き玉子・昆布巻き・蒲鉾・牛蒡 人参 絹さや等の煮物・奈良漬け、そして “釘煮” です。これらが竹皮風のコンパクトな包みにギッシリと入っています。作ったのは「蛸飯」や「牛めし」の駅弁で有名な神戸の調製元「淡路屋」で、六甲山をハイキングする人のために考案したそうです。しかし家に買って帰る人も多く、淡路屋の駅弁の中でも売り上げは常にトップらしいです。私が思うに、釘煮目的に購入する人も多いからではないでしょうか。種類の多いおかずを “アテ” に晩酌をして、〆におにぎりを食べる。“釘煮” も堪能できて満足できます。なお、淡路屋の駅弁は阪神間の主要駅や百貨店の駅弁コーナーなどで買うことができます。この春は“新物”の釘煮が味わえるかも知れませんよ。