(と‐8) 東 鉢
「とうはち」です。兵庫県北部にある鉢伏高原の東部にあるスキー場の名前です。
以前「ホームルーム合宿」という学校行事がありました。これは高校に入学したばかりの一年生が集団生活に馴染むために海や山の野外活動施設を利用して数日間クラスごとに行動し、昼間はオリエンテーリングや飯盒炊さん等のレクリエーションを、夜にはそれぞれの宿でクラスミーティングを行うという企画でした。最初よそよそしかった生徒たちが、この行事後には見事に仲良くなっていたものです。
私が教員になってから1年目と2年目が “副担任” として、そして3年目には遂に “担任” として生徒をホームルーム合宿に引率しました。その場所が表題の “東鉢” だったのです。一年生の12クラスがバスに分乗して兵庫県の北にある鉢伏高原の東鉢スキー場に向かったのです。スキー場といってもホームルーム合宿の頃には雪も融けて、ハイキングやキャンプファイヤー等の野外活動をするのに何も問題はありませんでした。
面白かったのは私の宿が偶然にも三年続けて「ふもとや」という 私の名前と似ている民宿だったことです。12のクラスが分宿するので 宿はクラス委員会の抽選で決まったのですが、ホテルのような立派な宿や “ヒュッテ○○” “△△ロッジ” などのしゃれたペンションに泊まるクラスもある中で 私のクラスは、床は畳敷きで部屋の仕切りは襖という 昔懐かしい “民宿” そのものでした。でも宿の方々がとても親切なので生徒たちもすぐに打ち解けて、部屋の掃除や食事の配膳・片付けなどを生徒も一緒になって行っていました。また、夜のミーティングのグループ発表の時には宿の方も特別に参加して下さり、この地方に昔から伝わる民話の “鉢伏の名は巨人が鉢を伏せて創った山だから” とか “狸や狐に化かされた人が山の中をグルグル歩き回った” などの話を面白おかしく語って下さって 生徒たちに受けていました。これは副担任として参加した1・2年目に この宿の生徒たちが 他のクラスを羨ましそうにしていたので、自分が担任の今回は生徒に寂しい思いを持たせないように 事前に宿の方にいろいろとお願いしていたからです。学校に帰ってからしばらくの間、生徒が私を “ふもとや先生” と呼んでいたことが面白かったです。
公立学校が「週五日制」になって授業時間を確保するために色々な行事が無くなり、このホームルーム合宿も今では実施されていません。またレジャーが多様化してスキー人口も激減し、野外活動のための宿泊施設の経営は大変だと思います。この文章を書くために「ふもとや」さんを調べると 47年後の今も民宿として営業しておられるようです。さぞ大変と思いますが、これからも “人情経営” で頑張って欲しいと思います。