(ぬ‐8) 射 干
「ぬば」です。ただ、この漢字二文字だけでは “胡蝶花” と呼ばれる多年草の「シャガ」や、アヤメ科ヒオウギの根から作られる生薬の「ヤカン」と読むことになります。しかし、これに「玉」がついて “射干玉” になると「ぬばたま」と読んで、万葉集などの歌の「枕詞」になるのです。
射干玉(ぬばたま)は、もともとヒオウギの種子が黒々と光沢のあること から “黒” や “夜” を表現し、そこから女性の「黒髪」や、夜の「逢瀬」を歌った枕詞として使われたのです。万葉集の(巻4‐525)に「大伴坂上郎女」の作として、こんな歌があります。
“ぬばたまの 黒髪変わり 白けても 痛き恋には 逢ふ時ありけり”
「黒髪が白髪になるほど年老いても、恋する貴方に逢うのは狂おしいことでしょう」とでもいう意味でしょうか?。こんな歌曲があります。
「春の日の花と輝く」 トーマス・モア 作詞、堀内敬三 訳詞、アイルランド民謡。
1.春の日の花と輝く 麗しき姿の いつしかにあせてうつろう 世の冬は来るとも 我が心は変わる日なく御身をば慕いて 愛は なお緑いろ濃く 我が胸に生くべし
2.若き日の頬は清らに わずらいの影無く 御身いま艶に麗し されど面あせても 我が心は変わる日なく御身をば慕いて 向日葵の日をば恋うごと とこしえに思わん
高校2年の音楽教科書に掲載されていた曲で、授業でよく生徒と一緒に歌いました。最近、万葉集の上記 “ぬばたまの~” を読んだ時に この曲が自然に浮かんで来て、今になって 歌のこころが深く理解できるようになりました。抒情的な曲なので、皆様もYouTubeなどでぜひ一度聴いてみて下さいね。