雄さんの昭和ひとりごと -せ_2-


(せ‐2)「戦争は知らない」

 静かな反戦歌です。50年以上も前、ベトナム戦争をきっかけに日本でも反戦運動が沸き起こり、各地で集会やデモが行われました。当時のフォークソングブームと重なって、集会の時には反戦歌が合唱されたりしました。その際に、よく歌われたのは「戦争を知らない子供たち」でした。詞・北山修、曲・杉田二郎、歌・ジローズによる1970年発表のこの曲は、合唱向きの声高に歌う曲です。だから参加者全員で歌うと気持ちが高揚して、集会も盛り上がったことでしょう。しかし私は「戦争は知らない」のほうが心に染み込んでくるものを感じます。詞・寺山修司、曲・加藤ヒロシ、歌・ザフォーククルセダーズによる1967年発表のこの曲は、あした結婚する20歳の女性が、自分が生まれることを知らないまま戦地で死んだ父に「嫁いで母になって、あなたの志を遺します」と語りかける悲しく、しかし強い歌です。聴くと、涙が出ます。以前「探偵!ナイトスクープ」に、戦地で死んだ父が自分が生まれることを知っていたか知らずに死んだかを調べてほしい、という依頼がありました。消されて読めなくなっている戦地から母に届いたハガキを橿原考古学研究所の職員が復元したら、父の「元気な赤ちゃんを産んでください」と書いた文字が浮き出てきて、依頼者・出演者・そして研究所職員まで全員が号泣しました。その番組と、この曲は重なります。歌はフォークル以外に、カルメンマキ・坂本スミ子・本田路津子・加藤登紀子・元ちとせ達によっても歌い継がれてきました。ロシアによるウクライナ侵略戦争や世界各地の紛争などで、今もたくさんの命が奪われています。こんな悲劇は一刻も早く終わって欲しいです。