(か‐6) カンタービレ(cantabile)
イタリア語で「歌うように」という音楽用語です。「cant」の付く音楽用語は他にも「カンタータ cantata(伊)」「カンツォーネ canzone(伊)」「ベルカント belcanto(伊)」などがあり、いずれも「歌」に関する言葉です。これはイタリア語やフランス語の起源となり、英語やドイツ語の発生にも大きな影響を与えた言語であるラテン語の「カントゥス cantus歌・歌曲」が基になっているのです。フランス語の「シャンテ」や「シャンソン」も同じです。
ちなみに、ラテン語で「長調の歌」を表す「カントゥス・ドゥルス cantus-durus」と「短調の歌」を表す「カントゥス・モリス cantus-mollis」は、ドイツ音名の長調(dur)と短調(moll)の語源となっています。
ところで、私が「カンタービレ」と聞いて思い出すのはチャイコフスキーの「アンダンテカンタービレ」、ではなくて「のだめカンタービレ」です。二ノ宮知子氏原作によるコミック(2001~2010年)で、のちにフジ系列によるTVドラマ化(2006~2010年)、東宝系列での映画化(2009・2010年)、昨年(2023年)の舞台ミュージカル化など、今でも人気の高い息の長い作品です。タイトルの「カンタービレ」に特に意味はなく「音楽に関する物語」ということでしょう。
ストーリーは、「落ちこぼれ音大生」なのにピアノの才能に関しては天才的なものを持つ「のだめ」こと野田恵と、同じ大学で学ぶエリート音大生の「ちあき」こと千秋真一が出会い、峰龍太郎や三木清良など多くの個性的な登場人物たちとともに音楽家として成長して行く物語です。面白いですよ。良ければ一度、観てみて下さいね。
なかでも私が特に面白く思ったシーンは、映画版「最終楽章」で海外留学中ののだめが自炊生活の部屋で怪しげな煮物(カレー?)を作っている時に鍋から湯気とともに「毒」「死」「苦」「菌」などの文字が立ち上がっていて、思わず「食べたらあかんで~」とつぶやいたことと、通学中のバス車内でのだめが納豆入りのおにぎりを食べている時に周りの外国人たちが鼻をつまんで苦しみ悶絶している場面でした。
なぜか、音楽的な場面より食べ物シーンの方が印象に残っています。これは私の幼少期からの「食べることへのトラウマ」のせいかも知れません・・・