雄さんの昭和ひとりごと (あー6b)

(あ‐6b) アイスクリン

 子供の時、実家のすぐ近くにアイスクリーム屋さんがあって時々買いに行きました。「ホームランバー」というアイスクリームをよく買いました。棒に「ホームラン」と書いてあるとその場でもう一本もらえ、「ヒット」だと4本集めるともらえました。他に「アイスクリン」もあって、縦長の保冷箱に入ったアイスクリームを丸い道具ですくってコーンに乗せてくれました。冬はアイスは扱っていなくて代わりに「ふくだま(たぶん福玉)」という俵型の小さな回転焼きを売っていました。機械を回転させる時の「ガリガリ・ガリガリ」という音が家にも聞こえてきました。

私たちが「はちまんさん」と呼んでいた伊勢久留麻神社の春と秋のお祭りには各地区から太鼓台が出ました。私たちの大北地区からも一基出ました。いわゆる「布団太鼓」で、てっぺんには赤い布団を模した飾りが五段に重なっていてとても華やかでした。本体の中には大きな太鼓が皮面を上にして置いてあり、法被(はっぴ)を着た大人が二人向かい合って座って叩いていました。太鼓台からは引き綱が出ていて、やはり法被を着た大人や子供50人ぐらいで太鼓の音に合わせて「ヨーヤー・ドコーイショー」と言いながら神社まで引いて行きました。法被はあざやかな水色で、背中に大きく「大北」と書いてありました。私たち子供も小さな法被を着させてもらいました。そんな太鼓台が各地区から出て来て、境内に5~6基ほどが並んで競うように叩き合っているのでとても賑やかでした。境内を練り歩く担ぎ手のために太鼓台からは井形に組んだ太い柱のような木が出ていて、私たち子供はそれにまたがって遊んだり違う地区の友人の太鼓台に乗せてもらったりして祭りを楽しんでいました。 ♪~村の鎮守の神様の 今日はめでたいお祭り~ という「村祭り」の風景そのものでした。

境内を取り巻く出店や屋台からは食べ物の良い香りが流れていました。実家近くのアイスクリーム屋さんも屋台を構えていて「アイスクリン」と「福玉」を売っていました。普段は同時に買う事ができないのに祭りのときには一緒に買えるということが何か特別な気がしたし「雄ちゃん、サービスやで」と言ってアイスクリンを多めに盛ってくれたことも嬉しかったです。

上機嫌で太鼓を叩く大人たちの酒の臭いと屋台や出店の食べ物の香りが入り交じった何ともいえない匂いが私の「村祭り」の想い出です。なお60年後の今もこの風景をSNSなどで見ることができますが、大人だけで太鼓台を引いているのが昔と違うことです。たぶん子供の数が少ないからでしょう。興味のある方は一度「伊勢久留麻神社動画」で検索してみて下さいね。画面からお酒臭さが漂って来ますよ。