雄さんの昭和ひとりごと (うー6)

(う‐6) ウクライナ

 ウクライナは今、ロシアによる侵略戦争に必死に抵抗していますが、実は遠い昔からロシアにはひどい目に遭わされてきたのです。

皆さんは「屋根の上のバイオリン弾き」というミュージカルをご存知でしょうか。1964年にアメリカで舞台発表されて好評を博し、1971年には映画化もされました。日本では1967年から現在まで 故・森繫久彌さんや上條恒彦さん、西田敏行さんや市村正親さんなどの主演で長きにわたって上演されてきたとても人気の高い作品です。

物語は19世紀末の帝政ロシア時代にウクライナのアナテフカという小さな町でユダヤ教の伝統を重んじながら暮らす人々の慎ましい生活を描いています。主人公はテヴィエという牛乳屋で、妻と5人の娘たちの七人家族で暮らしています。牛乳屋と言っても小屋で飼っている牛の乳を娘たちが搾り、それをテヴィエが売り歩くという小さな商売です。そのため、一家の生活はあまり豊かではありません。長女・次女・三女はそれぞれ結婚する年頃になっていますが、伝統として結婚相手を親が決めることになっているのでテヴィエ夫婦は三人をいかに良いところに嫁がせるかということに悩んでいます。しかし娘たちにはそれぞれ恋人がいるので親の押し付ける縁談に応じず、自分たちで選んだ相手と結婚してしまいます。あの有名な「サンライズ・サンセット」は、その長女の結婚式の時に歌われる曲なのです。

しかしアナテフカにはテヴィエたちユダヤ人の他にロシア人も暮らしていて、人数の多いロシア人たちがユダヤ人を追い出すためにたびたび危害を加えるのです。身の危険を感じた人々は最後にそれぞれ違う国へと散って行くのですが、その中で私が気になったのはイェンテという老婆が「私はユダヤ教の故郷エルサレムへ帰って安住するわ」と言ったことです。みんなが「それはいい」といいましたが、そのエルサレムのあるイスラエルが今現在パレスチナとどのような状況になっているかは皆さんご存知のとおりです。

題名の「屋根の上のバイオリン弾き」とは、屋根の上でバイオリンを弾くような危なっかしいことをすると転げ落ちて死んでしまうぞ、という「先の見えない危うい生活」を意味しているのです。なお、映画版では主題曲や挿入曲のヴァイオリン演奏を故・アイザック・スターン氏が担当しています。スターン氏はウクライナの出身なのです。