雄さんの昭和ひとりごと -ほ_2-

(ほ‐2)堀 淳一「森と野と古都の旅(旺文社文庫)」

 私は紀行文学が好きで、以前このブログでも紀行作家の宮脇俊三氏を紹介したが、この堀 淳一氏も紀行作家である。氏は1960年頃から地形図(地
図)を手に、日本全国の鉄道廃線跡・旧道・産業遺跡・廃墟などを実地踏査して、その紀行文を書くようになった。また海外(主にヨーロッパ)にも出かけて、風光明
媚な景色や変化に富んだ地形、山岳鉄道や保存鉄道などの魅力を地図を使って紹介してくれた。そのような文章をまとめた本「地図のたのしみ」は1972年の日本エッ
セイストクラブ賞を受賞している。ほかにも「地図を歩く」「地図はさそう」「地図から旅へ」ほか沢山の本を書かれ、地図好き・鉄道好きの私たちを楽しませてくれて
いる。ところで私は、かねてからその堀氏と宮脇氏がよく似ているなと思っていた。お二人もそれぞれにお互いを意識していたようだ。表題の堀氏の著書「森と野と古
都の旅」の解説を宮脇氏が書いているので、少し長くなるが引用してみたい。(前文略)「私事に及んで恐縮だが、本書の著者の堀淳一さんと私とは似通った点が、すこ
ぶる多い。生年は共に大正十五年(1926)。幼少年時代からの趣味は、堀さんが地図で、鉄道への志向も強いように思われる。私は鉄道の時刻表、ついで地図と地
理であった。二人とも理科系へと進み、堀さんは北大の物理学科、私は東大の地質学科へ入った。もっとも、物理学科の教授にまでなられた堀さんとちがって、私のほう
は在学中に文学にかぶれ、編集者に転向してしまったが。しかし、子どもの頃からの趣味は、大人になっても互いに根強く持ち続けた。そして、中年に至って定
職を捨て(堀さんは四十四歳、私は五十一歳)、趣味を生かした文筆業に専念することになる。堀さんは地図を手にしての踏査記が多く、私はもっぱら鉄道旅行記である
が、一括すれば紀行作家の範ちゅうに入る。とにかく、よく似た人生行路と言わざるをえない。」(以下略)。堀氏も同じ思いだから宮脇氏に自分の本の解説文を任せて
いるのだと思う。・・・私は地図主体の堀文学も好きだし、鉄道主体の宮脇文学も好きだが、今回、古書店で堀氏のこの本を見つけ、しかも解説文を宮脇氏が書いている
のを「発見」して、嬉しくなったので長い文章になったがここに掲載させて戴いた所存です。