雄さんの昭和ひとりごと -む_2-

(む‐2)ムーンライト・ソナタ

 グレン・ミラーの「ムーンライト・セレナーデ」ではありません。「ムーンライト・ソナタ」。ベートーヴェンのピアノソナタ「月光」です。彼は、その風貌と生涯独身だったことから「堅物男」と思われていますが、実際はそうではなかったようです。夢を抱いて花のウィーンに出てきた青年期の頃から耳の全く聴こえなくなった中年時代まで何人かの女性と真剣な恋愛をしましたが、身分の違いなどで残念なことにどれも成就できかったようです(ロマン・ローラン著「苦悩の英雄 ベートーヴェンの生涯」他による)。その恋愛の時、あの名曲「エリーゼのために」を友人の妹テレーゼに、表題の「月光ソナタ」をピアノの弟子で貴族の娘ジュリエッタに、それぞれ捧げています。興味深いのは、中年になってから「我が不滅の恋人へ」という宛先不明の熱烈な恋文を書いていることです。近年のベートーヴェン研究によると、それは友人の妻に宛てた手紙だったということです。しかし結局、手紙は渡せず、恋も成就しなかったようです。その後、彼は作曲に専念して、のちに「傑作の森」と言われる数々の作品を発表することになります。・・・なんか、あのベートーヴェンの人間らしい一面を垣間見た気がする話ですね。