雄さんの昭和ひとりごと -れ_2-

(れ‐2)檸檬

 「檸檬」は梶井基次郎(1901~1932)が1925年に発表した短編で、今も人気のある小説だ。主人公は心の中に「得体の知れない憂鬱」を抱えている若い男(梶井自身か)。その「憂鬱」に自分が潰されそうになっていたある日、果物屋でレモンを見かけて久々に清々しい気分になり、レモンを買う。そのあと洋書店に入ったら、また憂鬱な気分が頭をもたげて来た。その時、良いアイデアが浮かぶ。その黄色い紡錘形の手榴弾を本棚に置いて出て来たのだ。この洋書店を爆破するぞ!・・・この結末を知りたい人は、小説を読んで下さいね。梶井は当時京都に下宿しており、あてもなく街中をよく彷徨ったらしい。ここに登場する果物屋は二条寺町にあった「八百卯」、洋書店は当時三条麩屋町にあった「丸善」である。この小説は、梶井が若くして肺結核で亡くなった後に文学の世界で評価されるようになった。そしてその後、実際に八百卯でレモンを買って丸善においてくる人が後を絶たなかったそうだ。今で言う「聖地巡礼」だね。